【令和6年第3回定例会】大草よしえ一般質問内容・市長等答弁「宿泊税の使途:選ばれる都市の実現にむけて必要な地域特有資源の活用方策」(2024年9月11日)

 心豊かな社会をつくる会の大草よしえは、定例会で毎回一般質問に登壇しています。今回の令和6年第3回定例会では、宿泊税の使途に関連して質問を行いました。「国内外から選ばれる都市」の実現にむけて、現在点在している仙台発のレガシーを面的に「仙台遺産」として発信するブランディングや、それらが多様な主体の事業に最大限活用され新事業が創出される正の循環の創出こそ、自治体のやるべきことではないかとの観点を具体例も交えながら提言し、今回も市長や当局から前向きな答弁に加え、会派を超えて多くの共感の声をいただきました。
 以下に、大草よしえの一般質問の録画中継(仙台市議会HPリンク)、質問内容及び市長等の答弁(全文)を掲載いたします。

【録画中継はこちら(仙台市議会HP)】
https://sendai-city.stream.jfit.co.jp/?tpl=play_vod&inquiry_id=6789

令和6年第3回定例会 9月11日 本会議(一般質問)
心豊かな社会をつくる会 大草 よしえ
「宿泊税の使途:選ばれる都市の実現にむけて必要な地域特有資源の活用方策」

 心豊かな社会をつくる会の大草よしえです。議長のお許しをいただきましたので、私からは「仙台市宿泊税条例」に関連して一般質問を行います。

(1)導入:宿泊税の使途の効果最大化を図るための方策を

 少子高齢化により、日本の人口構造が大きく変化し、人口減少局面を迎える中、ますます激化する都市間 競争を勝ち抜き、「選ばれる都市」になるには、地域ならではの特色を魅力ある資源として発掘し、その資源を最大限活用しながら魅力あるまちづくりを行い、内外へ発信する必要があります。

 我が会派「心豊かな社会をつくる会」でも、「科学・技術の地産地消」を掲げ、これまでも定例会において、郡市長の目指す「選ばれる都市」を実現するためには、仙台ならではの知的資源を「科学・技術のポートフォリオ」として積極的に位置付け、本市の経済、教育、観光等の施策に最大限活用すべきとの提言を、具体的提案も交えながら行ってきました。

 今回は、郡市長が掲げる「世界から選ばれる都市」に必要な財源 確保策の一つとして、本定例会に議案としてあげられている宿泊税に関連して伺います。宿泊税は法定外目的税であり、地域の魅力を向上させるための財源だからこそ、その使途については精査し、議論を深めるべきと考えます。

 宿泊税の使途として、これを負担する主体である宿泊者がより快適に過ごせるよう、ハード面にお金をかけることは理解できます。快適さはハード面で整備されるものですが、一方で魅力については、むしろソフト面であり、ソフト面については、お金をかける方策だけでなく、知恵を絞れば、あまりお金をかけずとも、価値を高められる、費用対効果の高い施策も考えられると思います。そこで今回は、宿泊税の使途の効果最大化を図るための方策について、主にソフト面から提案を行いたいと思います。

(2)問題提起:仙台特有資源が仙台市民にさえ認識されていない根本問題

 「仙台には何もない」と言われることもありますが、実は、仙台ならではの資源として、ここ仙台で生まれ、世界や日本を変える源流となったレガシーが、仙台には数多く存在します。日本遺産として2016年に「政宗が育んだ"伊達"な文化」が登録されましたが、他にも、本市の名誉市民でもある、当時世界最強の磁石「KS鋼」を発明した、本多光太郎博士にはじまり、今日のわたしたちの便利な生活に欠かせない、電子レンジのマイクロ波を発生させるマグネトロン、スマホの基礎技術の原型、インターネットの光通信、パソコンの中にあるハードディスクなどは皆、ここ仙台から生まれ、世界を変えたオリジナルの技術です。

 これらは歴史的な偉業として世界的に認められています。例えば、電気・電子分野では「IEEEマイルストーン」として、世界中にテレビ受信アンテナとして普及した「八木・宇田アンテナ」やハードディスクの記録容量を飛躍的に高めた「垂直磁気記録」、国立科学博物館の「未来技術遺産」として、電子レンジやレーダー等に今も利用されている「分割陽極マグネトロン」。この他にも、電気学会の「でんきの礎」として今なお現役の日本の「水力発電発祥の地」である三居沢発電所、土木学会の土木遺産として、のちの新幹線につながる作並の「交流電化 発祥の地」、日本化学会の「化学遺産」として、「女性化学者のさきがけ 黒田チカの天然色素研究関連資料」、日本初の国立デザイン研究機関である工芸指導所が、仙台に開設されたことから「工業デザイン発祥の地」等々、枚挙に遑がないほど、仙台は科学技術史という切り口だけで見ても、世界に誇るレガシーの宝庫であります。

 にもかかわらず、仙台市民にさえ知られていないレガシーが多いことは、非常に勿体ないのではないでしょうか。実は、私自身も、仙台市民であるにもかかわらず、知らなかったレガシーが非常に多くありました。外の方が知らないのは仕方がないにせよ、地元の市民すら知らないのは問題ではないでしょうか。仙台市民すらその魅力を知らないのに、魅力が勝手に市の外へ伝わることはありえません。ましてや、「選ばれる都市」になるはずがありません。

(3)現状分析と提案:点在する仙台のレガシーを"仙台遺産"として一体的な活用を

 では、なぜ仙台市民にさえ、これら貴重なレガシーがあまり知られていないのでしょうか。改めて今回、私が関係各所を調べてみて感じた私見を、ここから述べさせていただきます。最も私が課題と感じたのは、それぞれの場所で個々個別に紹介自体はされてはいるものの、部外者から見ると、仙台市のレガシーとして、一体的にまとまっている形ではないために、能動的に情報を取りに行く方は別にせよ、その他大多数である、これから開拓すべきターゲット層にとっては、その情報にたどり着けない状況であるためと考えられます。従いまして、仙台にはせっかく世界に誇るレガシーが多数あるにもかかわらず、もともと精通している方を除いて、仙台市民を含め一般観光客を観光の目的地として惹きつけられるだけの観光資源にはなり得ていないのが現状と考えらます。

 そこで、宿泊税の使途として、現状バラバラに点在している仙台のレガシーを、仙台の宝として一体的に把握し、例えば、"仙台遺産"のような形で仙台市としてお墨付きを与え、ストーリーを語る上で不可欠な魅力ある有形・無形の資源として一体的に地域で活用し、内外へ効果的に発信していく、そのようなブランディングの施策が本市として必要ではないでしょうか。そしてそれをまずは足元の仙台市民にも深く知ってもらうことこそが、地域への理解と愛着を深め、郷土のアイデンティティの再認識、それが本市のブランド化へとつながり、そのことが「選ばれる都市」の何よりの土壌になっていくものと考えます。このような観点について、郡市長のご認識を伺います。

 次に、では、そのような地域特有の資源を、如何に効率的に収集し、効果的に活用・発信していくか、その方策について議論したいと思います。まず、「仙台遺産」のようなデータの収集そのものについては、それほど難しいことではないと思われます。なぜならば、先程も一部ご紹介したように、すでに学会などの学術団体によって、各専門分野において、遺産の選定と登録は行われており、各学会等も各専門分野のプレゼンス向上を目的にアウトリーチに対する意欲も高いため、連携が図りやすいと考えられるためです。また、個人的に調査や研究を進め、その成果を発信したいという強いモチベーションを有する市民の方々も多くいらっしゃることでしょう。また、宮城県では、ご存知の通り、ご当地検定スタイルで「宮城マスター検定」を実施し、地域資源の魅力発信を行っています。そのため、そのような多様な主体との連携により、それほどコストはかけずに、面的な情報収集自体は可能と思われます。

 むしろ本市として考えるべきことは、収集したデータを、歴史的な考察を踏まえた上で、市としてお墨付きを与え、「仙台遺産」として如何に効果的に観光振興へ活かしていくか、その知恵の絞り方だと思います。例えば、様々なステークホルダーが自由度高く活用できるよう、昨今のオープンイノベーションの流れを踏まえ、データはオープンデータ化するような仕組みでつくり、様々な事業者が自由に観光コンテンツやアプリを開発できる環境として提供したり、そこに例えば、経済局のスタートアップ支援とも連携して、オープンデータを活用したアプリ開発コンテストを開催し優勝者には開発資金を提供するといった、プロモーションとも一体となった展開を図る等々、知恵を絞ることで、あまりお金をかけずとも、観光を盛り上げていく方策は、色々なアイデアでもって考えられると思います。

 つまり、自治体の役割として重要なことは、自治体でこそできることに注力し、地域資源が各主体の事業に最大限活用され、観光ビジネスが続々と生まれる土壌をつくり、耕すことではないでしょうか。その結果として、多様なステークホルダーと協働のもと、観光客が仙台に魅力を感じて、快適に観光できる仕組みがつくれるものと考えます。

 今回は、「仙台遺産」、並びに、地域特有資源の活用方策について述べてきましたが、そもそも宿泊税を払うのはあくまで、宿泊者なので、まず第一に、宿泊者が満足できるように取り組むべきであること。そして次に、市民並びに事業者が、本市の観光全体がよくなっているという正の循環を実感できる仕組みを、本市としてきちんと提案すること。これらの観点なしに、宿泊税の議論は進まないものと考えております。ハード面の整備も必要ですが、それだけでなく、このようなソフト面にもぜひ意識を向けて、予算策定を行っていただきたいと考えておりますが、このような観点について、担当局並びに郡市長のご認識を伺います。

(4)波及効果:経済的価値のみにとどまらない地域特有資源の価値

 今回は宿泊税に関する議案のため、ここまで観光資源という切り口で質問を行ってきましたが、わたしたちの地域で何が生まれてきたかを知ることは、観光や経済的な価値のみにとどまらない、市民にとって大切な財産であると考えます。

 その価値の重要性は、私自身も仙台ゆかりの様々な方から、直に教えていただきました。例えば、本市の名誉市民でもある西澤潤一博士。ご存知の通り、西澤先生は、IT社会に欠かせない半導体や光通信の基礎となる技術を開発し、「ミスター半導体」とも呼ばれ、ノーベル物理学賞の候補にもなった本市出身の研究者です。仙台が「光通信発祥の地」と言われるのも、西澤先生たちの功績を称えたものです。

 このことは単なる歴史的事実にとどまらず、今日の仙台の"売り"にもつながっています。例えば、仙台の冬の風物詩となった「光のページェント」は、西澤先生が開発したLEDで半導体研究所のクリスマスツリーを点灯した情景に、感銘を受けた商店主らが、1986年に研究所と協働で始めたものです。また最近では、台湾の半導体大手が全国31の候補地の中から半導体工場建設地として宮城県大衡村を選んだ決め手のひとつも、西澤先生たちがリードしてきた世界有数レベルの半導体研究実績がベースになっているものです。また、ナノテラスを核とした東北大学のサイエンスパークが今年度から本格始動したところですが、サイエンスパーク構想自体は西澤先生が東北大学の総長時代に構想し実現を推進してきたものであると、関係される研究者の方々から伺っています。このように、その恩恵は技術面にとどまらず、本市が今日力を入れる施策にも脈々とつながっています。

 私も西澤潤一先生のお名前は存じ上げていましたが、てっきり歴史上の人物だと思っていたので、ご存命当時に実は仙台在住と知った時には真っ先に会いに行き、研究室やご実家に何度も伺いインタビューさせていただきました。そして、それまでに世の中にはなかったものを新しくつくっていった、先人たちの積み重ねの上に、今がある、ということを教えていただきました。それを西澤先生は「独創」と仰っていました。

 西澤先生を一例としてあげましたが、科学技術分野に限らず、様々な分野において、ここ仙台で生まれ、脈々と引き継がれてきた仙台オリジナルのレガシーがたくさんあります。そのことを知っているのと知っていないのとでは、市民の地域への愛着も、過去からの学び方や物事に対する興味・関心も、郷土のアイデンティティさえも変わってくると思います。

 そして、それこそが人口減少局面においても「仙台に住みたい」と思う強力な動機付けにつながる、まさに、本市の宝ではないでしょうか。それをきちんと自分たち自身で宝と位置付け最大限活用することで、後世にわたり生きる財産となるのだと思います。今回の宿泊税の議論が、本市がもともと有しているレガシーの持つポテンシャルを最大限発揮する契機となることを願って、私からの質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。

郡市長答弁

 只今の大草よしえ議員のご質問にお答えを申し上げます。地域資源の観光への活用等に関するお尋ねにお答えいたします。本市には、有形・無形の歴史的、そして文化的資産が数多く存在しておりますが、学都仙台の都市個性に育まれた科学・技術や知的資源も本市ならではの貴重な、そして重要なコンテンツであると認識しております。こうしたひとつひとつの資源に光を当て、その価値を再評価していくことは、市民の皆様がまちに誇りや愛着を持つきっかけとなり、それを一連のストーリーとして発信していくことによって、観光客の方々にも訴求する魅力的な観光資源になりうるものと考えております。宿泊税の使途につきましては、観光コンテンツの磨き上げや発信にも充当していくことを想定しておりまして、今後、本市が誇る地域資源を活用したソフト面の取組も強化していくこととしております。観光を基軸とした交流人口の拡大によって、地域経済への正の循環を生み出すとともに、市民が誇りを持って、観光客にも選ばれる都市をつくりあげて参りたいと考えております。

文化観光局長

 私からは、正の循環を実感できる仕組みづくりに関するご質問にお答えをいたします。宿泊税の使途といたしましては、訴求力のある観光コンテンツの醸成や、国内外への魅力発信強化等の施策を想定しているところでございまして、宿泊税導入後は、官民連携による協議会において取組の検証や施策の方向性について議論することとしております。只今様々ご提案をいただきましたけれども、今後多様な関係者と連携をしながら、科学・技術をはじめソフト面の地域資源の活用、それから観光産業の活性化につながる取り組みを推進するとともに、こうした取り組みを通じて、交流人口拡大の正の循環を生み出すことで、旅行者や市民、事業者の皆様にも効果を実感いただけるよう努めて参りたいと考えております。


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